人気ブログランキング | 話題のタグを見る

こころばの「無声の声」

茶色のニット帽(後半)

bonchanのお父さんと初めて会って、さすが江戸っ子だなぁと感じたことがありました。

当時の僕は長髪で、後ろで髪を結わえていた「40歳過ぎのフリーター(に成り立ての)男」でしたが、娘と付き合うそんな男に対しての文句が本当に一言も無かったことでした。あの時の電話での怒号が嘘のようでした。

とても和やかな時間が過ぎて、それでは帰りますという段になって、お父さんからプレゼントがふたつありました。

ひとつはお父さんと亡くなったお母さんが大切にしていたペアグラス。そんな大切にしているものを?とbonchanが言ったら「だから、君達にあげるのさ。おめでとう。」と。

そしてもうひとつは、買ったばかりだったという茶色のニット帽。お父さん自ら僕に被せてくれました。

そして一言。

「娘をよろしくお願いしますね。」




その次に会ったのは、お父さんが自宅で倒れて入院したという知らせが来た、その年の夏でした。

bonchanに連れられてお父さんのお見舞いに行った時見たのは、片半身の自由が利かず、起きることも話すことも不自由な思いをしている姿でした。

はじめて電話口越しに聞いた時の威勢の良い江戸弁口調も、正月に見た元気な姿もすっかり影を潜めていました。

ゆっくりゆっくりと出てくる言葉も、笑いながら、でもまるでこの先を覚悟しようとしているかのような、少なくとも希望は感じられない弱々しい言葉ばかりでした。

それでもお父さんは、この時だけはハッキリと、この時だけは僕をじっと見つめて…

「娘をよろしくお願いしますね。」

そしてそれが、お父さんが僕に話してくれた最後の会話になりました。

お父さんが亡くなった知らせが来たのは、同じ年の秋でした。




冬の季節のために、ニット帽はいくつか持っています。
bonchanのお父さんからもらった茶色のニット帽もその中のひとつです。
だから他人が見ても「普通の茶色のニット帽」という以外何にも気付かないでしょう。
でもその茶色のニット帽を被るたびに、僕の耳にはお父さんの声が聞こえてくるのです。


「娘をよろしくお願いしますね。」


bonchanと初めて出会って、今日で4年になりました。


by まんぼー
by kokoroba_mm | 2009-12-29 22:34 | mixi日記より
<< Bill "Tapp... 茶色のニット帽(前半) >>



日々の想いを言葉に代えて

by kokoroba_mm
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
こころばライブ情報
次回ライブは調整中です(^^)
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧